惑星が恒星を引っ張る時…

 今まで見つかった系外惑星の一つで、一番木星に似ている大熊座47番星を回っている惑星によっ て、その主星が引っ張られる速度の変化を計算しました。

(このページの計算に使ったアプリケーション(視線速度計算)を こちらのページからダウンロード出来る様にしました。)

 横軸は時間を表しますが、惑星が恒星の周りを一周する時間を1としています。
縦軸の単位はメートル/秒です。

視線速度変化曲線

 ここで傾斜角というのは、下の図に表したように地球から見てこの惑星の軌道がどれだけ傾いて いるかを表しています。
 なお現在公開されているアプリケーション「視線速度計算」では、この傾斜角の定義が、こちらの図の角度iにかわっているので ご注意ください。
このウェッブページでの視線速度・ドップラーシフト計算アプレットでの傾斜角もこの角度iと同じ定義です。
このページの値に90°を加えると「視線速度計算」で使われている値になります。

上の図が示すように同じ質量、軌道半径をもった惑星でも地球からみた軌道傾斜角が違うと速度変 化がことなるので、速度変化だけわかってもその惑星のパラメータを完全に決める事は出来ません。 (質量については、下限しか求められません。)

 またこの視線方向速度の変化曲線の形から、軌道の離心率を推測できます。曲線がsinカーブに 近ければ軌道は円軌道に近くなります。上のグラフで使ったのと同じパラメータを用い離心率0.0の場合と 0.30の場合について計算した図を下にしめします。

離心率と速度変化

この図から、視線方向速度変化曲線の形から離心率を読み取ることが出きると言うことが、わかって もらえると思います。

 実際の観測では上のようなきれいな速度曲線が得られるわけではありません。
観測で得られるのは、スペクトルのドップラーシフトの変化ですがこれが実に僅かな量です。例えば 系外惑星の中で、もっとも大きな視線方向速度変化をしめすおとめ座70番星の場合でさえ、恒星の運動 によるスペクトルのドップラーシフトの"変化の割合(*)はわずかに、0.0001パーセント(10の-6乗)程度 です。

変化量が極めて微量である上、その微少量から地球が公転することや他の惑星からの摂動による運動 を除くという操作をしなければなりません。
 そうやって残ったものから、系外惑星の軌道パラメータを推測するという操作をやるわけですが、上の 様に与えられたパラメータから速度変化曲線を計算するのは簡単ですが、逆をおこなうには大変な量の 計算をおこなう必要があります。

もっとも多くの系外惑星を発見しているGeoffrey MarcyとPaul Butlerは大変な苦労をしてこの様な 解析をおこなうプログラムを完成させたそうですが、あまりにも大量の計算をするプログラムになった ので、まわりから「こんなプログラムは決してきちんと動かないだろう」(というような事をいわれた) という話が、1996年2月5日号のTIME誌に紹介されているくらいです(なおTIMEの日付けは日本で発売 されているTIMEの日付け)。


(*)ここでの変化の割合とは 、Loをドップラーシフトする前の波長 Laをドップラーシフトで変化した後の波長として (La - Lo)/Loで計算される量を意味します。