4.重力マイクロレンズ効果の利用

 まず重力レンズの説明をしておきます。

 一般相対性理論によると、質量(を持った物体)の周りの空間(正確には時空)は歪むので空間を直進する光も、 質量(を持った物体)があるところでは曲がって進みます。

 その結果、質量を持った物体の周りはレンズと同じ働き(光を曲げる)をします。これを重力レンズと呼びます。
 ただしかなりの質量がないと、この効果は確認できません。例えば太陽のふちぎりぎりを通った光は、角度(下の図のθ)にして僅か1.75秒角だけ曲がり下の図のように本当の位置と違う方向から光が来るように見えます。
(1秒角は3600分の1度です)

 太陽の質量をもってしてもこの程度なので、重力レンズ効果がはっきりあらわれるのは質量が銀河(銀河団)ほどある場合です。

太陽による光の屈折

 下に重力レンズの効果を説明する図をしめします。
 この図は観測者(O)と重力レンズ効果を引き起こす質量(G :下図では銀河を想定)、観測される光源(S :例えばより遠方の銀河(団) )が一直線にならんだ場合です。

重力レンズの説明

 Gによって本来観測者には届かないはずの光が、曲げられてとどきみかけの像は実際の光源と異なったものに見えます。
 光源Sが点光源とみなせるほど小さく上図のようにO - G - S が一直線にならぶ場合は、見かけの像はリング状になります。
 ただし実際は、一直線にならぶような場合はまれで、O - G - S が一直線からずれる場合は、みかけの像は上の場合のような対称な像でなく分裂した非対称な像が観察されます。
 詳しくは、こちらのWebサイト「重力レンズ効果とは」などをご覧下さい。

 重力レンズは物体(質量)に近いところほど大きく光を曲げるので、凸レンズのような焦点を持ちません。 重力レンズと等価な効果を持つレンズは中央がそりあがった形のレンズ( ワイングラスの底のような形 )になります。
下図に、凸レンズと重力レンズの比較図ならびに重力レンズと等価な(光学)レンズの形を示します。

重力レンズの効果 凸レンズの効果

 さて重力レンズ効果を引き起こす質量が小さい場合(恒星の場合など)は、上の説明で示した様な形の変形は起こりませんが、光が曲げられて本来は届かなかった経路の光が観測者に届く事で重力レンズ効果がない場合より、光源は明るく観測されます。
 これを特に重力マイクロレンズ効果と呼びます。
 この効果を系外惑星の発見に利用する事が考えられ実際に、いくつかの系外惑星が見つかっています。

 具体的な方法は以下のようになります。
 観測者(地球)と遠くの恒星(などの光源)を結んだ線の間に、恒星が(空間を移動しているので)近ずいてきます。
するとこの恒星が重力マイクロレンズ効果を引き起こし、遠くの恒星からの光が増光するのが観測されます。

光強度の変化の説明

 レンズになる恒星が伴星や惑星をもつ場合は、横軸に時間、縦軸に光強度をとった図を描くと下図にしめしたように増光のピークがふたつ(以上)になるのでこの現象を利用して系外惑星を発見できるという訳です。(レンズになる恒星が単独の場合は上の図内の増光変化グラフのようにピークはひとつだけ)

 名古屋大学太陽地球環境研究所のグループが実際にマイクロレンズ効果を利用して発見した系外惑星の場合の光強度変化のグラフが こちらで発表されていますので参照してください。

増光の仕方

 この方法は、他の間接検出法にくらべて、地球クラスの質量の小さな惑星の発見が可能で、かなり遠くの恒星をまわる惑星の発見も可能という大きな特徴があります。
(視線速度検出法やAstrometory による方法は、遠くの恒星の場合や惑星の質量が小さい場合は、検出する変化が極めて小さくなるので検出が難しくなります。)

 問題点としては、地球型のように質量が小さな惑星の場合、増光の期間が短いので連続的な観測が必要になる事があります。


参考文献
「重力マイクロレンズ現象を利用した暗い天体と太陽系外惑星の探索」(日本物理学会誌 2005,Vol60,No.12 p943 〜 )

参考WebPages
重力レンズ効果とは


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