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□ 『 ヤバイ…声が…  』 

 

翌日…少し寝過ごす、サスガに酒が残ってる…

それにしても昨日は濃く長い夜だった


昨晩を思い出しながら、スタジオに行く準備を始める

今日歌う曲の鼻歌でもと口ずさんだソノ瞬間…

『 あ”” … ♪” … あ”れ?』 … 声がデナイ(愕然) やバイ


高域部のメロディのピッチが上手く掴めない、かすれてしまうのだ!

喉の調子はいつもスロースタートな方だが、今日は特別悪い


どうやら、昨晩呑んで調子に乗り過ぎて喋り過ぎた様だ…

呑んで喋るのは一番喉によくない〜分かっちゃいたけど…

まるっきり自己管理が出来てなかった、これではプロ失格である

果たして、今日はどうなるのか??あぁ;Mサンの反応が恐ろしい…

 

□ 『 お”は”よ”う”ござ…(-_-;)  』 

 

正午過ぎ、中目黒到着

足取りが重い…あぁ〜叱ら〜れ〜る(苦笑)スタジオのドアを開けた

『 お”は”よ”う”ござ…(-_-;)  』 みんなが振り返る、M氏だけ振り向かない…コワ(汗)

少し間が開く、『とりあえず、ブース入れ!』 やっぱ歌うよねぇ〜今日も


大丈夫かぁ?自分に自問自答、とりあえずやってみるか…

今日に限って、ピッチの取りにくい楽曲「 coquettish 」だ


二十歳過ぎに書かれた初期の名曲もプロのテコ入れが入り

すっかり大人びたアレンジに仕上げられ、その甘いイントロが流れだした♪…

 

■ 『 やめてもエエぞぉ〜別にぃ…』

 

『 言葉にぃ〜♪ し〜きれ”ない〜♪ 』 

… あかんわ(@_@;)愕然!ハイトーンは出ても、低域で喉が思うように塞がらない

焦りと後悔の念が頭を駆け巡る…

しかし、昨日が無ければまとまる話もまとまらなかったし…


『 どうする?今日やめてもええぞ〜別に〜 おまえが決めろ〜ブチっ 』 

Mサンからのトークバック。だが、明らかに止める気はなさそうだ(-_-;)キビシ〜

『 少し考えさせて下さい … 』 とブースに一人こもる


無音のボーカルブース、声を待っている高価なコンデンサーマイク、歌えないボーカリスト

孤独だ、最初の頃のミーティングの会話が頭をよぎる

全て自分次第…究極の生楽器『 声 』


どうする?Takahiro?? … 

 

■ 『 自分の写真写りのようなモノ? 』

 

潜水艦のハッチの様なボーカルブースの重いドアを開け、ミーティングルームに出てみた


皆、何をするでもなくTV画面に映るMTVを眺めてる…

『 おっ。どうする?Takahiro?悪くないよ。 』 プロデューサーのY氏が振り返る

『 もう一回、気合入れて歌いますよ。 』こっちも意地である


そこでM氏が口を開く、『 まぁ、オマエが思ってる程悪くないでぇ〜

もう、一回行っとけ、いい感じで力抜けてるし 』

そうすかぁf(^_^)…あ。いやいや乗せ上手も百戦練磨プロの仕業か(-_-;)



この歌は自宅録音、自主制作CDで何度となく歌い直されて来た曲

思い入れも一入であるがこんなに苦戦を強いられるとは


とにかく!仕切り直しで再度ブースへ… その気の重さたるや、言葉にしきれない〜♪”

 

 

■ 『 なんでもアリなんよ〜今の時代 』

 

最近は録音機材の進歩で

テープを使わずPCのハードディスクに直接録音(書き込み?)してしまうスタイルが主流だ


その昔これは、プロだけの特権だったが(高価だった)

現在アマチュアの世界でも当たり前になった

こうなることによってどういう事が起こるかというと

歌の中の一字一句歌い直したり差し替えたりがいとも簡単に出来てしまうのだ


だからぶっちゃケ、録音の段階は下手でもいいのだ

よく、歌番組でアイドルの生歌聴いてビックリするでしょ?アレ

しかし、今回はそんなテクノロジーの恩恵は極力受けないのが僕らのスタイル!


切った貼ったのボーカルテイクではなく、一本筋の通った歌を聴かせたいっ!

っと、その昔この歌を作るきっかけになったあの娘の事を(/o\)思い出しながら

歌入れは続く♪☆○(゜ο゜)o

 

■ 『 そういえば… 』

 

『 鳴る当てのなぁ〜イ電話の前で…』

と歌っていた時にふと思った事があった


もちろんこの曲、恋愛のトキメキなんか歌った歌だが

最近電話の前で待つ事なんて無くなったよなぁ〜(◎_◎)なんて

というのも、今でこそ携帯電話全盛期だがこの歌が書かれた時はそんなものは皆無

ポケベルすらままならない時代だった


『携帯電話』一種これは個人専用無線機みたいなもんだから

待ち合わせではぐれて気持ちにすれ違いが生じたり

夜中突然電話して、相手の父親から怒鳴り散らされる事もない(これかなりビビったね昔)

でも今は今で、携帯電話にでないと疑われたり

メイルで言いにくい事伝えたり(逆に言いたい放題だったり)

アリバイ工作してみたりカーナビみたいに居場所も分かるらしいじゃないですか

最近は…悪い事出来ないねぇ

物理的な技術の進歩により

恋愛の形態もかなり変わって来てる気がする…なぁんてマジマジ考えた


これからの男女間はどんなになっていくのだろう…

でも、相手に気持ちを伝える『 言葉 』は不変なんだろうねぇ

『 おーい!TK!もう一回!』 ブチ! … あっ。うた、歌、(苦笑)

■ 『 火事場の… 』

 

しばしの格闘の末〜遂に!〜火事場の馬鹿力みたいなモノが出る

そう言えば普段ライブでは一人で二、三時間は歌ってるもんなぁ

そう簡単に凹む喉では無い!はず?


戻ることは永久に無いのでは(笑)?とまで思えたミキサールームに無事生還

プレイバックに聞き入る…

ん〜我ながら頑張った!

若き頃のか細い声とは雲泥の差


あの時のド素人ボイス?に眼を潤ませてくれたアノ娘に(笑)もう一度聴かせてあげたいもんだ

今頃、何してるんだろうねぇアノ娘…公私混同の夕暮れ5分前…IN 中目黒

 

■ 番外編 『 歌詞って? 』

 

歌の歌詞についてよく質問が寄せられる…

全部実話なの?とかね

歌の数だけいろんな事してたら身が持たん(笑)


実話もあるけど、人の身の上話の延長だったり

映画からインスパイアされたり…とさまざまだ

僕の音楽を支持してくれる人々の性別、世代は千差万別、実に幅広い


僕の作るメロディ、詩の世界に自分と何らかの共通項を見つけて共感してくれるのだろうが

それが何なのかは実はよく分からない(苦笑)


多くの支持を得るためには心の琴線に触れる最大公約数をはじき出せば言いのだが

それは口で言う程、たやすい事ではない〜狙って出来るようなものではない

今のところ言えるのは…

自分自身に子守唄の様に歌って自分が

励まされたり癒されたりしてるモノが皆に受け入れてもらえてる?と言う事

自分が本当にイイと思えたモノを自信を持って出す!

これしか無いのである〜自分に嘘をつけば全て終わってしまうだろう


生きて行く上でも、自分に正直であり続ける事…これって意外と難しくないですか??

 

■ 『 twinkleはかすれ声が返って良かったり 』

 

12月xx日

喉も順調に回復し、『 TWINKLE 』の歌入れも無事終了



次は、最大の難関『 ROSE 』である

というのもこの曲は仮歌入れの時、歌えるだろうと安易にキーを高い目に決定していたのだ



後日オケの出来あがりを聴いた時、ホントに歌えるの?と半ば不安になっていたのだ

歌のバックも他の曲と毛色の違うアレンジ、仕上りが予測出来ない


歌入れの緊張が連日続き、かなり疲れが出てきている…もうひと踏ん張りなのだが

■ 『 うぁ、キツ 』

 

『 愛〜されて咲〜き誇る花(ToT)の様に〜♪ 』

 う。…やはり…花の部分が出ない…キツイ

何度歌ってみても、メロディのピッチに到達せずM氏が首をたてに振らない


ファルセット(裏声で)逃げようと提案するが、アッサリ却下のM氏

更に何度とナク歌わされる、昔に観た『 ラ・バンバ 』と言う映画を思い出す


実在したアメリカのロックスターの自伝話なのだが、その彼が念願の初録音時に

出だしの『 WELL〜♪ 』 って所を何十回、何百回と歌い直しさせられる場面だ


結果的にはその部分が大受けで大ヒットするのだが…

 

■ 番外編 『 ROSE 』 

 

『 ROSE 』 

…この歌は、トラウマを背負いながらも果敢に自分の人生と向き合う人への応援歌

誰にだって、多かれ少なかれ心の傷の一つや二つはある

気付かない振りをしているだけで僕達にだってあるはずだ


傷の有無が問題ではない、その傷とどう付き合って行くかだ

トラウマは時として、人生のジャンプ台にも落とし穴にも成りうる


この歌で人の人生を変える事は出来ないが、
変えるきっかけは作れるはずだ

LAで出会った某有名コピー機会社の重役の方が


『Takahiro君の仕事は見えない社員の気持ちを引っ張る

社長業みたいなもんだねぇ(笑)確か、うちの社長もそんな事言ってたなぁ…』

皆が僕の歌を聴いて、前向きな気持ちに成れた時

僕は自分自身の存在価値を再確認する …

 『 愛されろ!咲き誇れ!』

イマイチ、いいテイクが録れないままミキサールームへ戻る

プレイバックを聴きなおしてみるがやはり納得がいかない

自分の実力を疑い、追い詰められたネズミの様に、スタジオ内を右往左往…


『 オマエが素人だったら、PCの飛び道具使ってピッチ修正してやるとこやけど

オマエにもプライドあるやろ〜?』



…そうだ、この日のRECまで漕ぎ付けたミュージシャンとしてのプライドもある

最高の『 ROSE 』を世に送り出さねば…


『 もう一丁、歌ってきます!』もう我ながら、青春ドラマの並の燃え方である(苦笑)  

 

■ 『 そこからは!怒涛の快進撃 』

 

【 愛した分だけ愛されたいと、口癖になっていた昨日の君が

抱えきれぬ瑠璃色の夢とこの街を駆け抜ける … − ROSE − 】

気に入っているフレーズである

再度ボーカルブース入りしこの部分を歌った時、何かが吹っ切れた


このフレーズを僕に書かせるきっかけを作った人々に

この歌を聴かせたい、純粋にそう思えた

『 愛されて咲き誇る花の様に〜君咲き誇れ

僕に向ける過去の傷跡、全て受けとめよう〜』

 … おぉ。歌えた☆○(゜ο゜)o。


ガラス越しのミキサールームにすかさず眼を向ける

M氏のヘッドフォンを付け歌詞カードを見つめたままだ

ありゃ(@_@;) ?駄目?… 

とその時、『 ええやん今の!オマエの喉

かなりスロースターターやなぁ〜これ使いまぁす。ブチっ 』

?お。 やりましたぁ !


ここからは快進撃、声が出る出る!

プレッシャーや緊張から時放たれた喉は何かに導かれるまま


この後一気に録音を終了させたのでした

 

■ 『 ナルホド〜女性コーラスね 』

 

最大の難関 『 ROSE 』の歌入れも無事終わり

ホッと一息ついたところで


M氏が『 TWINKLE 』と『 ROSE 』に女性コーラスを入れようと提案

…なるほど〜それもありか、今まで自分の声しかかぶせてなかったから新鮮でいいかもね

ということで、コーラス録り当日

スタジオに来た女性Sサンは、昔M氏のバンドでボーカルを担当してたそうだ

挨拶もそこそこに彼女はボーカルブースへ

ハモリパートを確認して淡々と重ねていく…曲は『 TWINKLE 』


その第一声を聴いたとき年齢、外見に似合わない声でビックリ!

声がウィスパーボイスでカワイイのだ、声がっ。怒られるでぇ(苦笑)

ミキサールームのモニターから流れる声…

『 会いたいよ〜愛感じたい〜♪』…カワイイ…声が


M氏のOKが出て、彼女がミキサールームに戻って来る…現実に戻される(爆)

 

■ 『 魅惑のウィスパーボイスと二人きり〜 』 

 

『 ROSE 』の歌入れには二人同時にブースに入る、お互いのパートを確認し録音

メインパートで苦労した分、ハモリは完璧

僕の声に絡むウィスパーボイスにうっとり(笑)

つい、ヘッドフォンで聴いてて隣に眼を向けてしまう.…

いやっ見てはイケナイ(爆)って叱られるで〜


なんの問題も無く終了〜あまりに早く終わったので皆で飯でも!

と意気投合。REC終了前なのに打ち上げモードだ…


■ 『 モツ鍋紀行 』

行きついた先は、都電ガード下のモツ鍋屋

暖簾をくぐれば熱気の篭った店内からは威勢のいい声が返ってくる


サスガは場所柄、壁にはサイン色紙が所狭しと飾らsれている…

博多出身のオーナーが作る、博多仕込みのモツ鍋が自慢だそうで


音楽で一旗挙げるのと同じく、料理の世界も地方出身者が都会でしのぎを削っている

…本物だけが持つ説得力〜確かに美味い…

そんな、一発入魂の鍋を突つきながら乾杯っていうか…みんなよく呑ナァ


なぜかこの業界は酒豪が多い

打ち上げの為にライブをやってるって言い切ってた人もいるもんなぁ

酔ってくると、やはり出るのが芸能ゴシップ(◎_◎)9…

今夜の主役はコーラスのSサン暴露話だ!…



■ 『 夕焼け!80’』

 

バックコーラスのSサンの暴露話が始まった…

当時Mサン率るバンドA解散後

いろんな歌の仕事をして来たそうだが


一時、飛ぶ鳥を落とす勢いの番組フジテレビ『●やけ○ニャン』から飛び出した

某アイドルグループのゴーストボーカルをやってた事があるという

全国ツアーがあると、ついていってカーテン越しに隠れて歌うのである( `_)乂(_´ )♪


ツアー先の宿での彼女達の女の争い話☆(゜o(○=(゜ο゜)oやらには一同大爆笑

特に会員番号△番のあの人の男癖の悪さは当時評判だったそうな…

あぁ。あの娘結構好きだったのにナァ…怖

 

■ 『ETERNAL VIBES 』 abcs-23 KING RECORDS −

【  『 ETERNAL VIBES 』 「 エターナルヴァイブス 」と読む

名前の由来をよく聞かれる

イメージ的には水滴が水に落ちて波紋が広がる…あんな感じ

僕が作った音のヴァイブがとどまる事無く

永遠に果てしなく広がって欲しいという、切な願いが込められている  】

 

■ 『 インタールード 』

 

バックコーラスも無事録り終え、4曲が揃う

せっかくだからオマケ的なボーナストラックを一曲入れようということになり

未完成の楽曲『 SEED 』のサワリ部分を入れることに


少し録音レベル小さ目、音質もわざとラフに仕上げて次曲の盛り上げに使う

…洋楽ではこういうのを【 インタールード 】と呼ぶらしい

聴いた感は屋外録音の様だが実はギター持って

スタジオ一発録りで弾き語った後に効果音を足したもの


イメージ的にはギターを天気のいい昼下がり

ギターを爪弾きながら作曲してるタカヒロ…そんな雰囲気なんだけれど、感じ出てる?