2016年10月4日
[化学]

金属のイオン化列

\[\rm K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb \]
\[\rm >H_2>Cu>Hg>Ag>Pt>Au \]

単体の金属の原子が,溶液中で電子を放出して陽イオンになる性質を金属のイオン化傾向と呼ぶが,それの大きいものから順に金属元素を並べたものが金属のイオン化列である.高校の時に,「借り借るな,まああてにすな,ひどすぎる借金」というなんとも世知辛い語呂合わせで覚えた人も多いと思う.この金属のイオン化列は,大学では標準酸化還元電位(standard redox potential)という概念に置き換えられ,より定量的に把握されるようになる.
このイオン化列は,人類の金属利用の歴史と関係があり,イオン化列の右側にあるもの,すなわちイオン化傾向が小さいものほど古くから人類に利用されてきた.金(Au)は古代より多くの文明で用いられ,例えばツタンカーメンの黄金のマスクは紀元前1300年頃に作られている.鉄は中国の春秋・戦国時代(紀元前600年頃)にふいごによる高温を利用して作られた.アルミニウムが鉱業的に実用化されるようになったのは最近のことであり,アメリカのホールとフランスのエルーが1886年それぞれ別々に融解塩電解を用いたアルミニウムの精製法を発明した.
このように,イオン化傾向が小さいものの方が古くから人類に利用されてきたのは,イオン化傾向が小さいものほど,単体の金属として単離しやすく,精製にエネルギーを必要としないからである.アルミニウム缶は電気の缶詰と呼ばれるぐらい,アルミニウムの精製には電力が必要である.現代社会を支える電子機器類は様々な金属を用いているが,それらを作るのにもやはり多大なエネルギーが投入されていることを忘れてはいけないと思う.




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