『この世に生まれて』

 人生って、いったい何だろう。
 漆黒の闇に包まれた大宇宙の生い立ちからすれば、
 瞬きのような一瞬かもしれない。

 折り返し点を通り過ぎ、生てきた歳月よりも残り短くなった余生。
 もう、そんな年齢になったのか。
 歳(とし)をとるのは早い。
 脇目も振らず、がむしゃらと言うより、時代(とき)の流れに身を任せながら、ぼんやりと過ごし、のんびり生きてきた。
 それでも前を見つめる余裕もなく、後を振り向いてばかりの日々。
 海を眺めると、水平線の向うの異国に憧れ、行ってみたいと、衝動に駆られた。
 大空を見上げれば、鳥のように天高く舞ってみたい、と叶わぬ夢を膨らませた。
  多感な思春期は遠い昔。今でも時々思い出す。
 一人静かに音楽を聴きながら想う。
 
このまま老いて、朽ち果てるのだろうか。


     『ヒューマニティー』

 戦争と平和。
 対立と和解。
 分断と統合。
 独善と寛容。
 不信と信頼。
 憎悪と慈愛。
 絶望と希望。
 
空も、
 海も、
 何の隔たりもなく、一つに繋がっているのに、この世は相反するものばかり。
 人類の歴史は、傲慢ゆえの争いの連続。たとえ、敵対勢力であっても相手を打ちのめすより、寛容の精神で和解し、融和と共生の道を歩みたい。


     『くねくね道』

  還暦が過ぎて、三年目の秋を迎えた。
 立ち止まって振り返ると、我が人生は細いくねくね道。あちこちにぺんぺん草が生え、土ぼこりが舞い上がる。小石につまずき、よろめきながら歩んだ若い頃を思い出す。
 時には疲れ果てて、幾つもの曲がり角で時々、小休止もした。
 足跡はかすんで見当たらず、無味乾燥の空間が広がっていた。
 それでも、明日はある。
 生きるために。
 まだまだ先は長い。