『風鈴』
「チリーン、チリーン」。
鈴虫の鳴き声に誘われるように、縁側の軒に吊るした風鈴が夜風に揺れて、心地よい音色を奏でています。
月明かりの中、耳を澄ませ、庭に乱舞するホタルを目で追っていると、はにかみ屋の貴方の笑顔を思い出します。
あの日から三度目の夏を迎えました。
そろいの浴衣を着て、団扇(うちわ)片手に人波に押されながら、漫ろ歩いた十三夜の夏祭り。
今だに忘れられません。
おねだりし、屋台で買ってくれた風鈴は私の宝物。
手をつなぎ、心ときめき、子供みたいにはしゃぎました。
そんな想い出にひたっても、鮮明に覚えている日々は、
大音響とともにパッとはじけて、夜空を彩る大輪の花火のように、消えました。跡形もなく。
独りぼっち、寂しいです。
出来ることなら、夕涼みに二人で風鈴の音を聴きたかった。
『四季うつろい』
空(から)っ風、吹き抜けて、風雪に耐えた籠りがちな冬が過ぎ、サクラの季節を迎えて、めくるめく夏を見送った。
稲穂が黄金色に染まる、つかの間の食欲の秋をむさぼり食らう。
四季の移ろいに身をまかせても、楽しい人生、幸せな人生、有意義な人生には縁遠い。
『戦争』
入道雲。
半ズボン、白い半袖シャツに麦藁帽子の少年。
線香花火。
夏休み。
あの夏の日から、八月十五日の終戦記念日を迎えた。
今だに、世界は戦争や軍事紛争、テロの脅威にさらされている。
国家や民族、宗教による組織的な無慈悲な破壊と殺戮行為。
それどれの思惑と世界観に基づく大義という主義主張を振りかざし、敵対勢力のせん滅に専念する愚かで、理不尽な人間の仕業。
それが残虐な戦争だ。
強大な軍事力を背景に威嚇し、軍備拡張と核兵器の使用をちらつかせ、世界を滅亡の淵に追いやる。
人類は幾千万人が死に、傷つき、恐怖のどん底に突き落とした戦禍の悪夢を忘れただろうか。
自由と人権、民主主義。平和の礎である。
もう一度、不戦を誓った終戦の日を顧みよう。