変異種の説明をしていくにあたって、ボディ上に色分けされた錦華鳥独自のパターンがありますのでそのパーツごとの名前を示します。このサイトではこの部位名称を使ってそれぞれの変異の特徴を解説します。
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(なるべく少ない文字数で表したいので漢字を当てています)
■虹彩、瞳(こうさい.ひとみ) |
目は虹彩と瞳に分かれています。白目は隠れています。 |
■涙マーク(なみだまーく) |
なみだせん、るいせん、と呼ぶ人もいますがとにかくそれのことです。 |
■チークパッチ(cheek patch) |
オスの頬にある丸斑のこと。メスにもこれが出る品種もいる。 |
■ロアまたはローア(lore) |
「クチバシと涙マークの間」といちいち書くのが面倒なので、
この部位に「ロア」という名称をつけました。
特徴の説明の時よく使うのでよろしく! |
■喉ストライプ(throat stripe) |
スロート・ストライプと読んでください。白黒のゼブラストライプ。 |
■胸バー(breast bar) |
ブレスト・バーと読んでください。 喉ストライプの下、胸のあたりにある黒く太いラインです。 |
■フランク(flank) |
オスの脇腹にある栗色の帯状斑。 |
■スポット(spot) |
フランク上に散りばめられた白い小さい水玉模様。 |
■尾(tail) |
しっぽは2つのパーツに分かれる。「尾」という時はベース部分。単色。 |
■尾カバー(tail covert) |
テイルカバーと読んでください。尾の上を被う、縞を持った数枚の羽根。 |
■尾バー(tail bar) |
テイルバーと読んでください。尾カバー上にある横縞。 |
■上尾筒(じょうびとう) |
尾カバーの根元にかぶさる、腰から続く羽毛。 |
■下尾筒(かびとう) |
尾を下から支えるように生えている羽毛。 |
錦華鳥の体には、次のような色素が存在しています。
変異遺伝子がそれぞれの特性でそれらを変化させた結果、多くの変異品種が存在しています。
錦華鳥の羽色は「黒」「フォーン」「オレンジ」「チェスナット(栗色)」そして「色の不在=白」から成り立っています。
これらの色が希釈されることによって他の色(クリーム色とグレー)を作り出すことが出来ます。
これら以外の色は異種交雑なしには作ることは出来ません。
つまり例えば、赤い錦華鳥、グリーンやブルーの錦華鳥を決して見ることはありません。
羽毛のない部位、クチバシと足については赤から黄色、その中間の色となります。
クチバシは黒になることが可能ですが、それはヒナから若鳥の期間にだけ示されるに限定されます。
【ユーメラニン】(Eumelanin)
黒色素です。羽毛を灰色や黒に染めることに働くメラニンの一種です。
ユーメラニンがわずかに変化してフォーンカラーが作られます。
【フェオメラニン】(Phaeomelanin)
褐色色素です。ノーマル錦華鳥のチークパッチとフランクの色、つまりオレンジとチェスナット色のもとになるメラニンです。
《 カロチノイド・カラー 》
錦華鳥のクチバシの赤い色と、足のオレンジ色を作っているのがリポクローム色素(Lipochrome)です。
これは脂肪質の、いわゆるカロチノイド・カラーといわれるものです。
リポクロームは
イエロービークのクチバシと足を黄色くすることに働くものです。
しかしリポクロームは錦華鳥の羽毛上には決して見つけられません。他の鳥種たとえばカナリアなどでは、リポクロームはカナリーイエローとレッドの羽色を作るもととなることはよく知られています。
これらの色は錦華鳥では羽毛上にリポクロームが足りないために発現が不可能です。
錦華鳥の変異を理解するためはまず「ノーマル」をよく知らなければ始まりません。ノーマルとは野生種そのままの形態であり、このパターンと色がすべての基本です。変異遺伝子が優性遺伝であるとか劣性遺伝であるというとき、それはノーマル(野生型)に対して優性か劣性かをいいます。
それぞれの変異遺伝子が「ノーマルに対してどう働くか」であり、その効果の重なりで結合種の外観が決まるのです。ノーマル(野生型)は品種名としてはノーマルグレイといいます。
【 オスの外観 】
頭から後頚部にかけては濃い灰色。背翼面はさらに濃くさらに茶の色素が入った濃灰褐色。
風切羽の先端にかけて濃色でグラデーションが入るが、本当のぎりぎりの淵は淡色で細く縁取られる。
クチバシは赤く、その基部の羽毛は黒くクチバシの縁取りのように取り巻く。
目は黒。しかし上の部位名称の画像でもわかるようにじつは虹彩は赤茶色である。
それが顕著に出る個体も珍しいわけではない。飼い鳥化されてから目は黒っぽくなってきたようなのでわかりにくい個体もいるが個体差の範囲内であり、瞳が黒いものは「黒目」という。
イノのような「赤目」の品種は錦華鳥にはいない。(Con.CFWとホワイトの結合に注意)
ロアはオフホワイト。涙マークは黒。涙マークより後方に濃いオレンジのチークパッチがくっきり丸くある。
尾は黒。尾カバーは特に強い黒で、その上に白い尾バーが乗る。
喉ストライプはオフホワイトの地に黒い細線。(これがゼブラ(シマウマ)ストライプに似ていることから錦華鳥は英名をゼブラフィンチ(Zebra
Finch)という)
胸バーは黒。(ノーマルの胸バーの大きさをおぼえておいてください)
フランクはチェスナットカラーと呼ばれる濃い赤茶色で、その上に白く小さい円形のスポットがたくさん乗る。
胸から腹にかけてはオフホワイト。下腹部から肛門付近、下尾筒に向けてもオフホワイトだが薄く黄褐色を帯びる。
腰から上尾筒はオフホワイト。
足の色はオレンジ色。イエロービーク種以外はどれも同じこの色である。
※涙マーク、喉ストライプ、胸バー、これらをまとめて「黒マーキング」といい、
チークパッチとフランクをまとめて「オレンジマーキング」といいます。
【 メスの外観 】
オスにあるオレンジマーキングがないこと以外はオスとほぼ同じである。
チークパッチエリアは頭や頚部と同じ灰色。喉ストライプや胸バーやフランクのエリアは薄い灰色である。
クチバシはオスより淡くオレンジ色である。雌雄の見分けがつかない品種ではクチバシの色で判別する。
腹の色はたいていオスよりメスのほうが黄褐色が濃く、色づいた範囲も広い。
【 ノーマルグレイのヒナ 】
孵化してまもないヒナは薄い灰色の産毛がまばらにあるが、ほとんど裸である。皮膚は黒い。
筆毛も黒い。小さい時期であるほど黒く見えるが、筆毛が開けばすぐ親に近い色になる。
ヒナは成鳥メスの姿に似ている。
涙マークは雛羽ですでにあるが、オス特有のマーキングは雛換羽が始まらないと出てこない。
クチバシは黒い。これも雛換羽と同じ頃から赤くなりはじめる。
ヒナには「開口マーク」と呼ばれるものが上あごにある。
暗い巣の中でも親の注意を引き、餌をもらいやすくするアピールのためにあるといわれる。
オーストラリアの書籍で「A Guide to…」というシリーズがあり、色々な鳥種ごとに出ています。
そのシリーズの錦華鳥版が、この「A Guide to Zebra Finches」ですが(クリックで拡大)
ABK Publications (Australia) |
この本の最初にオーストラリアの自然界に暮らす野生の(ワイルド)錦華鳥が載っています。
その写真をここに載せたいところですが、この本の内容の転載は著作権所有者の書面での許可が要るのでそこまでして載せませんからワイルドを見たことない人は想像してください。
ワイルドはさすがに精悍な表情をしています。体つきも引き締まっています。
太陽光の下で虹彩の赤茶色がとても目立ちます。
私達の家で飼っている錦華鳥たちにも陽光のもとではこんなキリリとした目を見せてくれる鳥がいます。
いずれにしても瞳は黒です。
オーストラリアでは、繁殖シーズンには一つのコロニーで同時に巣が47個ほどにもなるコロニー繁殖が観察されています。
棘のある木に、スズメバチのような巣を形作ります。
巣の外形は大量のしっかりした植物の茎などを使って形作られ、卵や孵化したヒナのために内部は細く小さい葉や羽毛を使ってととのえられます。
ほかには柔らかくした植物の繊維や、羊の毛なども使われますがオーストラリアならではでしょう。
レアなケースでは、布地のきれっぱしや紙くずなども巣から発見されるとのことです。
野生の錦華鳥はヨーク岬半島とタスマニア島を除くオーストラリアのほぼ全域に分布しています。
オーストラリアンワイルドには重要な唯一の亜種がいます。
それが「T.g.gattata」であり、チモール錦華鳥という名を聞いたことがあるでしょう。
「T.g.castanotis」こちらがよく知られたオーストラリアンです。
現地ではさまざまな調査のなかで野生捕獲個体のサンプル収集もされ、その写真が紹介されていますが、2種は大きさにはさほどの違いはなく、体型が違うといった感じです。
オーストラリアンは(見慣れたフォルムです)頭部がまるく肩が張っていてクチバシが短いのに対して、ティモールのほうは頭部もクチバシもホッソリとして首から胸など体全体が細長いです。
そしてオーストラリアンの喉ストライプが「白地に黒線」なのに対して、ティモールはゼブラストライプが胸バーの周りにしか無く、アゴ〜喉〜胸バーまでのエリアは灰色無地となっています。胸バーも小さめです。
野生種はどちらの種にしても、飼養下のものより小さめです。特にショーバードと比べては、並べた写真をどこかで見ましたがミニチュアのように小さい。
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アメリカのロイ・ベッカム氏(http://www.efinch.com/)によれば、入手ができなかったチモール種が近年、ティモール地方からの「timor
spallow」など他の輸入鳥に紛れて少数羽がアメリカに入ってきたというのです。
現在、少数の熱心な錦華鳥飼育家によって殖やされ確立されてきています。
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ところでこの本にはオーストラリアの変異品種のスタンダードがイラストで解説されています。
時々かんちがいしている人がいますが、オーストラリアには生物の輸出入禁止令があります。
この本に載っている変異種が全部日本にも当然いると思わないでください。
オーストラリアにだけしかいない変異種はたくさんあります。
(そういった品種につきましては写真が入手できないので、このHPではイラストで紹介しております)
逆に日本では当たり前のペンギンはニュージーランドにまでいるのにオーストラリアにはいないのです。
オーストラリアに限らず、ヨーロッパやアメリカでもそういうことがあります。
海外の本やサイトを見る人は写真だけを見て誤解したまま間違った名を広めないよう気をつけましょう。