うちの曾祖父さんは自分の息子が風毒という病に侵されたとき、臭木(くさぎ)の虫というのを取ってきて、それの丸焼きを食べさせて病気を治した。また祖父さんも自分の娘が肺炎に罹り医者に諦めるように言われたとき、同様に臭木の虫を採りに行き、それを食べさせ治した。父はそのことを知っていたので自分の癌が肺に転移したと聞いた時、山に臭木の虫を採りに行き食べていた。今年検査で癌が小さくなったと聞いて、父は臭木の虫のお蔭と信じている。ところが、脳梗塞で体が弱り、山へ一人でいけなくなった。僕はそんな虫を信じていなかったが、父がそれで少しでも元気になればと山へ同行することになった。臭木の虫は臭木という木の根っこにいる。臭木は荒れた山に生えており、最近は、それが生えている場所をさがすのも難しい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

臭木を見つけると次は茎の下のほうを見て虫が食っていないか探す。

 

穴が開いていても古い場合は、虫はいない。新しそうな穴を見つけたら、その木を根元から掘り起こす。次に根っこを少しずつ割っていき、虫を探す。

 

捕まえた虫はガスコンロを使って、火箸で掴みながら焼く。

 

焼き過ぎると破裂してハラワタが飛び出し役に立たなくなるそうだ。この虫探しのお蔭でヘトヘトになっていた。ところがこの虫を調べると、実はコウモリガの幼虫で、体内に冬虫夏草の菌が寄生していることがあるらしい。この冬虫夏草が癌に聞くらしい。まんざらウソでもなかったかと焦げた虫をしばらく見ていた。