特産物あれこれ
それほど有名でなくても、本当に良いもの。ひなびていても、この土地ならではの味。特産物コーナーでは、そんな品々を会誌『はまぼう』の記事を紐解き紹介したいと思います。年3回お送りする物産も、自慢できるふるさとの品を選んでいます。

五ヶ所小梅
果肉が厚く、大きさが手頃で形が良い、と市場でも評判の五ヶ所小梅が、今年も5月中旬から出荷されます。『軟らかくて本当に美味しい梅干ができますよ』とおっしゃるのは会員で名古屋市の松本愛子さん。入会以来、ご家族皆が五ヶ所小梅のファンで、『お友達の所にも事務局から送って貰っているんです。最近は外国産のものが多いと聞きますが、低農薬の五ヶ所の梅貴重ですね』と毎年楽しみにして下さいます。五ヶ所浦の農協指導課では『ここ数年生産が増加し、現在、小梅としては県下一。表作の年は30トンの生産が見込まれます。直接、産地から買っていただくのがお徳ですよ』と話しています。毎年、ご注文は5月末までに。写真は加工された五ヶ所小梅の梅干し。

中津浜のひじき
カルシウムの豊富なひじきは、低カロリーな上食物繊維が生野菜などと比べて各段に摂取しやすいと近年注目の健康食品。湾央の中津浜浦で採れるひじきは、殊に軟らかく風味の良さが好評です。その秘密は、まず採る時期。3月下旬、春先から伸び始めた若芽が堅くならない内に刈り採り、浜に上げて一旦干します。製品に加工するのは、田植えも済んだ5月。水洗いの後大きな釜に『こしき』を乗せ、半日蒸し、乾燥させて出来上がり。中津浜漁組の話では以前は「塩ひじき」で出荷していたが、現在は採取から販売まで全て個人単位とか。「海が荒れてひじきも少なくなったし、また会社勤めの人が増えて、採る人も少なくなりました」

真珠
水が清く、冬でも海水が暖かい五ヶ所湾は、真珠貝の成育には好適の海。かつては御木本幸吉翁もこの入り江に養殖の本拠地を置いていました。現在は五ヶ所を中心に中津浜、船越、木谷などの漁家90戸が真珠養殖に従事し、県内生産量の9%弱にあたる年間520貫の生産を揚げています。11月から2月に浜揚げされ、母貝から採り出された真珠は主に組合で集荷。伊勢の真珠会館で開かれる入札会などで取り引きされ、加工されて各地の真珠店に並びます。『五ヶ所の真珠は巻がいい。だから値がいいんですよ。』と養殖組合長のお話。養殖筏の数も吊るすカゴの数も英虞湾などに比べて密殖でないため良質の真珠が採れるのだそうです。最近真珠専門店もでき皆、産地価格のお手ごろ価格で提供できるそうです。以前の浜揚げ体験で参加者全員に真珠母貝3個のプレゼントがありました。ひとつの母貝には2個の殻珠を抱かす訳ですから、計6個。その場で加工されタイピンやブローチに。会員の皆さんは満足のいく真珠を手に入れることが出来たでしょうか?

ミル
暑くなると、素麺やら、トコロテンやら喉越しのスルリとしたものが美味しいですが、冷やしたミルも夏ならではの食べ物です。「ミルというのは、波打ち際の岩などに生えている海草ですわ。」濃い緑色で太い枝状のモジャモジャした、ビロードのような手触りの。これを、この土地では灰(重曹)を加えて茹でて水に晒し、酢味噌で食べます。「とりたてて味はないもんやけど、茹でた後の鮮やかな緑と口当たりの良さを楽しむんですな。酢味噌もその家の好みの味です。」このミル、平城宮出土の木簡によれば、古代から五ヶ所湾の産物として都へ送られていたらしい。ローカロリーですから昔からダイエット食品として人気があったのかな?

かつお茶漬け
4月から5月の時期、旨いものと言えば鰹ですなあ。それも一本釣りの『熊野灘もの』。五ヶ所湾では、宿・田曽の港に採れたてのピンピンが水揚げされますから、活きのいい鰹が食べられます。刺身、たたき、手こねずしもいいですが、この土地でよく食べるのがかつお茶漬け。作り方といいましてもね。薄く切った刺身を温かい御飯に乗せて、醤油を垂らし、その上から熱いお湯をたっぷり注ぐ、ただそれだけのものですが、いやぁ、これが旨いですに。生姜やワサビ?この辺じゃ、昔から何もかけませんなぁ。でも鰹が表面だけ湯引かれて、ちっとも生臭くありませんよ。こんな食べ方も鮮度がいいからでしょうね。

真珠貝の貝柱
秋が深まって11月の末、海水が冷たくなると真珠の浜揚げが始まります。アコヤガイを剥いて、貝の肉の中から珠を採り出す作業ですが、この時期の副産物が貝柱。大きさは3センチ位ほど。『勾玉』の形をして、剥き立てを水でさっと洗って酢味噌で食べると、これがなかなかの味なんですわ。帆立貝のような口当たりの軟らかさはないですけど、歯ごたえがあって、貝特有のうま味がある。この辺では、生で食べますねぇ。竹串に差してフライや天麩羅にしたり、炒めもの、スープ、五目御飯と色々な料理に利用できますけど、何と言っても生のままが一番美味しい。酒の肴にはもってこいですわ。地元ならではの贅沢ですなぁ。

なまこ 冬の珍味
冬の五ヶ所湾で旨いものといえば、忘れてならないのが『なまこ』。湾奥の静かな入り江で獲れる小振りのナマコの美味しさはまさにこの海を代表する冬の味と言われます。体長20センチほど、幅は6センチぐらいの大きさで、体色は2種類あり赤褐色のものの方が青緑色のものよりも柔らか。塩で揉んで滑りをとり腹わたを抜いた後、筒切りにしてサッと湯通しし、三杯酢で食べます。柑橘酢とよく合うのでスダチを絞り込んだり、柚の一片を入れてさわやかな香りを添えて召し上がって下さい。