とある男の恋愛話

愛とか、恋とかそんなものにはアンマリ縁がないと思っていた。別に一人で生きていくというつもりは毛頭なかったし、適当に相手が見つかれば結婚とかして子どもが生まれてそこらじゅうで繰り広げられるどこにでもあるような家庭をもつのかな位に思っていた。取り立てて希望なんかなかったし、あったところでそんなものを100%かなえられるのは一握りしかいないと思ってた。自分は誰にも選ばれない。それはそれでいいと思っていた。そんな人生も悪くないだろうし、そんな風なのが僕には合ってるのかもしれない。

  でも、君に会って気付いたよ。そんな自分がただの強がりを言っていただけだったって。

初めて会った時に君に目を奪われたわけじゃなかった。綺麗な子だなとは思ったよ。でも、ただそれだけ。君も僕にそういったね。特に好きでも嫌いでもなかったって。しかし、その後の僕の行動はもう周りの目から見れば「あいつにぞっこんやんけ!!!」といわんばかりの行動だったようで。なにせ「あの娘来る?」と訊いてこなければ「行かない!」って言うんだから。

  貴女が風邪を引いて会う機会がなくなったとき、僕はなぜか貴女に会いたくなった。なんか不思議だね。ただ、会いたかった。それでやっと会えた時僕は心から嬉しかった。なぜか嬉しかった。貴女もそうだったのかな。なぜか泣いてたもんね。

  クリスマスに女の人と一緒に過ごすなんて何年振りだろう?この日までに貴女に渡すためにプレゼントを買いに行ったよ。「人のために出す銭なんかびた一文無い!!!」なんて言ってた僕が柄にもなく宝石店なんかに行って、店員に「彼女にですか?」なんて冷やかされて。胸張って「そうですよ」なんていわなかったけど、なんか誇らしげにでも、照れくさくて。一生懸命探してやっと見つけたのは細い、ちょっとしたきっかけで切れてしまいそうなネックレス。値段は・・・・一万円。一万円!福沢諭吉一人!!!いくらなんでも年の瀬に、こんな大金出してしまったら、新年はどうするんだ!!!親戚のチビ達、年始にやってくる友人との新年会。結局買ったけど。その後貴女に渡すのに僕はどれだけ苦労したか。はっきり言って怖かった。似合うかどうか、貰って喜ぶものかどうか、そんな事何も考えずに買ったから。大体貰ってもらえるかどうかわからない。でも、結局その日の内に渡しに行ってしまった。

「ハイ、ちょっと早いけどX’masプレゼント」

「ハイ?」

貴女はきょとんとした目で僕を見た。まさか僕が何か渡すなんて想像してなかったんだろう。キングオブ守銭奴が私にプレゼント?てな感じかな?でもちょっとどころじゃない、なに考えてるの、まだ2週間もあるのに。そんな顔してた。

  それでも包みを開けて中を見たら貴女は目を丸くして、そして僕の方に顔を向けて笑いながら「これ、私つけない。」って。

「なんで!?」、その問いに貴女は

「こんな大事なもの、他の人に見せたくない。だから。貴方といるときしかつけない。いいでしょ?」

そのときの僕の顔はさぞかし複雑な顔だったろう。嬉しいような、それでもせっかく買った装身具をつけないといわれて怒ったような困ったような。多分そんな顔だったんだろうと思う。

  それをつける間もなく貴女がもらい事故をしたという話を聞いた。勿論貴女から。大丈夫かな?と言う問いに首が痛いって。そして正月元旦。初詣の約束をしてたのに準備ができたと言う電話がこない。「起きたら電話頂戴」と留守電に入れる。しかし電話はこなかった。やっと来たのは昼過ぎ。「今入院しているの」その知らせは新年早々僕を落ち込ませるのは充分だった。病院と言ったら携帯電話はつながらない。会いに行く、と言う僕に貴女は一言「来ないで!!!こんな姿みられたくない!!」

と言う事であっという間に独り者に逆戻り。寂しいもんだ。悲しいもんだ。辛いもんだ。こんなにつらい事はなかった。なんだろう?この心の空虚さは。寂しい。早く顔が見たい、声が聴きたい。そんな思いが日々募る中、もう寝ようとした時、携帯電話が鳴り響く。着信音は「LOVEマシーン」だ。まさか。彼女の携帯だけそれが鳴るようにしてある。それが鳴るってことは・・・。半ば呆然としながら僕は携帯をとった。貴女の声、あれだけ聴きたかった声が今、あの小さい携帯電話から流れてくる。言いたいことは山ほどあった。でも口から出てきたのは「やっと声聞けた・・・・」。後は何もない。それだけで充分。

そして今、会える機会は少ないけれど貴女は僕を見ると満面の笑みを浮かべて迎えに来てくれる。たまに手料理も食べさせてもらう。誕生日には手袋、バレンタインにはチョコを貰いそのお返しにはハムスターのぬいぐるみ。毎晩抱いて寝ていると言う。なんか照れくさい。ちょっとぬいぐるみにジェラシー感じたりもする。たかがぬいぐるみに嫉妬していると言うのもばかげている。でも、はっきり言ってちょっと悔しい。安いけどペアリングもしている。自分の指に傷だらけだけど、そんな事ものともせずに輝いているシルバーのリング。貴女の指にも同じものが付いているのだ。そう思って毎日その指輪を見ている。不思議ににやける顔。貴女もそうなのだろうか?自信はない。

何年か先も、一緒にいたりするのだろうか?よくわかんない。でも一緒にいれたらいいなと思う。そんなこんなでこれからもよろしく。

今僕は幸せだ。日本中で?世界中で?人生の中で?そんな事どうでもいい。たった今、この時間、僕は幸せだ。