「さて、あたしはここから別行動させてもらうわ」

 相方から離れるように歩行速度を落とす。

「ちょっと行きたいところがあるの」

 少し生意気な笑みを浮かべてやると、相方は何の返事もよこさずに去っていった。

「―――『あの子』には興味があっても、あたしには興味ないんだ」

 姿が見えなくなってから口の中で呟く。闇を思わせる髪を撫でると隙間から月の光が漏れる。

 仕事は済んだ。

 誰にも会わない裏路地を選んで何処という目的もなく歩いていく。

 いつもなら本拠地まで一緒に帰るつもりでいたのに、今日はそんな気にはなれなかった。

「どうしたのかしら?あたしらしくない」

 気付けば見晴らしのいい屋上に居た。自分の背丈ほどのフェンスに飛び乗り、腰をかけて夜景を楽しむ。

「綺麗ね」

 夜を迎えた都心は静かだ。だが、それでも街から光が消える事はなく、車もせわしなく走り続けている。

「騒がしい世界だと思わない?どうして人間はこんなに愚かなのかしら」

 誰かに問い掛けるような文。

 視線はそのまま気配だけを向ける。

「ねぇ、MZD?」

「―――なーんだ。やっぱバレてたか」

 影が歪む。

「当たり前じゃない。あたしを誰だと思ってるの?」

「そうだったな……Ms.B」

 嫌みったらしく答え、姿を月光にさらしだす。

 夜だというのにかけたままのサングラス。服装は少しばかり変わっているが、前にパーティで見た時と大きな

変化はない。姿は永遠の子どものまま。可愛らしいテナーボイスが闇夜に響いた。

 初めてBが顔を動かす。

「その呼び方、嫌味かしら?」

「嫌なら別にいいんだぜ?」

「だって、貴方が知っているのは『あたし』であってあたしではないもの」

「そうだな。じゃあ訂正すっか―――ベル?」

 月にかかっていた雲が風に流されていく。

 MZDは軽くジャンプするとベルの横に同じように腰かけた。

「今日は何のよう?またパーティかしら?」

「いや。今日は違う」

「じゃあ―――?」

「最近暴走を始めた奴が多いんだ」

 サングラス越しに足元を見下ろす。

「俺は『神』の名のもとに無数の命を生み出した。だが、どうも俺に反論する奴が多くてな。好き勝手に殺しあっ

 たり、死んだりしてやがる」

「その中にあたしは入っているのかしら?」

「勿論だ」

 即答。

 それでもBは怒るどころか苦笑を浮かべた。

「それで?他には誰がいるの?」

「パーティ参加者だけでも、あと二人」

「多いわね」

「まぁな。俺も驚いてるところだ」

 フェンスに足をひっかけ、上半身の力を抜く。同時に身体は宙ぶらりんな状態になった。

「ま、俺が寄せ集めてきた捻くれ者の集団とは前々から思ってたけどさ、こうもいるとは思わなかったって」

 引力に引かれて落ちていくサングラスを外す。

「―――それで?」

 光の芸術が消える事のない街。

「あたしをどうする気なの?いう事を聞かない奴は殺すのかしら?」

「俺は人を殺すのも死なれるのも嫌いなんだよ」

「そうなの?面白いのに。一度殺れば―――ハマるわよ」

 MZDを見下ろす子悪魔。

 バレると分かっていながらも、MZDは顔を顰めてみせた。

「最悪」

「ありがとう。それが最高の褒め言葉だわ」

「あ、そ」

「もう一度聞くわ。あたしをどうする気なの?」

「―――なーに。何もしねぇよ」

 影に背中を押してもらい、街を見下ろす体勢に戻る。横で珍しく眼を丸くしたベルの顔が微かに視界に入った。

「それ。どういう意味?」

「そのまんまの意味」

「―――貴方の考えがあたしには分からないわ。神ってそんなに気まぐれでいいの?」

「別に?つーかさ、お前。本キで俺が神だって思ってるわけ?」

「えぇ。宗教信仰はどの国にもあるように、フランスにもあったもの」

「めずらしっ。大抵の奴は信じねぇってのによ」

 ま、信じてくれるならそれはそれで嬉しいけどよ、と独り言のように呟く。

「俺は何もしない。生まれてしまったものはそのまま流しておくだけだ」

「ただ放置するの?」

「あぁ」

「じゃあ、今日は一体何しに来たの?ただそんなどうでもいい事を愚痴る為に来たとか言わないわよね」

「当ったり前だろ」

 今度はMZDが笑う番だ。

「ちょっと最近暇でさ。ほら、ポップンパーティもこの前やったばっかだしよ。何か楽しみが欲しいなっと思った

 ワケさ」

「それで?」

「なぁ、ベル。お前、残りの二人に会いたいって思わねぇか?」

「パーティ参加者にいる二人?」

「勿論」

「どうして?」

「ただの暇つぶし」

 フェンスに手をつき、細い鉄骨の上に立つ。自分は永遠の少年。神だから死なない。だからどんなに無茶な

行動だってとれる。

「暴走してる奴らがご対面したらどうなるかなって思ってさ」

「でもあたしがそんな人達と会っちゃったら、殺してしまうわよ?」

「それは俺がさせない」

「あら、そうなの」

 つまらないと口の中で付け足す。

「腹黒いお前達の中で誰が最強かなって思っただけ。面白そうだろ?題して『女王は私よ、決定戦』♪」

「まぁ、あたしはいいわよ。その招待、受けるわ」

「―――ツッコミ無しかよ」

 底の厚い靴をフェンスにひっかけ、腕を軸に飛び降りる。着地と同時に闇夜になびく黒髪。

「時間が決まったら早く教えてもらえるかしら?『あたし』の予定があるから」

「分かった」

 元からない二人の気配。

 錆び付いたドアだけが唯一音をたてた。

「―――それにしても」

 影に問い掛けているのか、それとも独り言なのか。MZDは大きな月を見上げて呟きだした。

「本当に捻くれ者だな、あれは。それに他の奴らも」

 溜息と笑いが混ざったものを漏らす。

「さて。次の奴らを誘いにいくか」

 冷たい夜風が吹く。

 MZDは影の中に溶け込むように姿を消した。

 

 あまりお世辞でも広いとはいえないとあるアパートの一室。女の子らしい可愛らしく飾られた小物などがよく目

立つ。

「ただいまぁ」

 ドアが開く音と同時に少し疲れを帯びた声が投げかけられる。

「お帰りなさい、リエちゃん」

 部屋の主の一人であるサナエは晩御飯の準備をしながら、同居人であるリエの帰宅を迎えた。

 床を擦るスリッパの音が響き、続いてソファに倒れるリエと鞄の音。

「もう疲れたぁ」

「どうだった?」

「うん。なんとか近いうちにファッションショーが出来そう」

「御疲れ様」

「モデルさん捜しに今日は体力使い果たしちゃったよ」

「―――そうだ、リエちゃん?」

 包丁を動かす手は止めず、肩越しに問い掛ける。

「何?」

「ちょっと明日の夜、友達の家に泊まりに行くから」

「友達?」

「えぇ。大学の友達なんだけどね」

「分かった」

 すんなりとサナエの嘘を受け入れ、ソファに備え付けられたクッションに顔を埋める。

 トントンと規則正しい包丁の音。

 無表情で夕食の準備をするサナエは、明日のパーティを楽しみにしながらガスコンロに火を点火した。

 

 月夜。

 離れにあった使われていない部屋に居候する女は、まだ太陽が顔を出す前に部屋を出た。

 家の主は神社を挟んだ反対側。別に夜中に抜け出したからといってばれる事は無い。

 カランコロンと下駄の音。

 月光を受けて蒼い髪がなびく。暗闇をしっかりと見つめるのはピンクの瞳。闇に半分同化した着物が幽霊を思

わせる。

 女はただ黙々と走った。

 音楽のように深夜に響く下駄の音は動物達に呼びかけた。不気味に鳴き出す烏、意味も無く吠える犬。いつも

以上に回し車を走るハムスター。

 不気味に浮かべる笑み。

 女は何も無い荒野という戦いの舞台へ向かった。

 

『あら?』

 顔を合わした三人は同時に同じ言葉を呟いた。

 それを見ていたMZDがただ一人笑う。

「はははっ。お前ら面白い反応するなぁ、本トに」

「普通は驚くと思うわよ?」

 と、黒髪の少女。

「同じく。こうも知り合いばっかだとは思わなかったわ」

 と、白いマフラーを首に巻いた少女。

「なんだか殺りにくいわね」

 と、着物の少女。

「俺はちゃんと言っただろ?パーティ参加者だって。それともう一つ、題名は『女王は私よ、決定戦』ってさ♪」

「つまりこの三人の中から最強を選べと?」

「ん〜。別にそういう意味じゃねぇんだけどさ」

「べつに私はそれでいいわ」

「同じく。ポッパーの中にこうも最強がいるとお互い邪魔だと思うし」

 三人の視線が互いに火花を散らしあう。

 Ms.Bことベル、サナエ、カレンはある程度顔見知りではある。しかし、今の舞台ではそんな関係はなんの意味

ももたない。

「ルールは?」

「無し。俺はただ見るだけ」

「傍観者?」

「いい身分ね」

「なんとでもお好きなように言ってろ」

「まぁ、いいわ―――やはりここは死ぬ気で殺り合うのが一番じゃないかしら?」

 元からその気でいたBがスリットの入ったスカートの下から銃を取り出す。フランスからずっと一緒にいる愛用の

コルト25オートを手の中に包み込み、舐めるような視線を二人へ向ける。

「そんな事言って、いいのかな?」

 可愛らしい笑みとは裏腹に、手にしているのは血で書かれた数枚の札。

「本気で殺しあったら、誰が残るのかしら?」

 袖に隠れていた手を出すとその上には小さなハムスターが一匹、ちょこんと座り込んでいる。

 風が駆け抜ける。

「それにしても二人共、いつもとは全然違うわね」

「ふふっ。あたしはあたしであって『あたし』じゃないから、そう思うんだと思うわ」

「私も同じかしら?まぁ、この格好は滅多な事がない限りしないんだけど」

「結局の所、見た目が普通なのは私だけ、か」

 独り言のようにサナエは呟いた。

「さてはて三人さん?これから殺り合うのか?」

「そのつもりよ」

「MZD。止めなくてもいいのかしら?」

「どうして?」

「貴方が一番嫌いなのは、人が死ぬ事じゃなかったのかしら?それも目の前で」

「大丈夫だ。俺がここで見てる限り誰も死なさねぇよ」

「そう」

「ま、どうでもいいけれど」

「本当」

 三人はこれからの舞台を見上げて呟いた。

 呼び出されたのは廃墟と化したビル。少し都心から離れているだけあって、少々暴れた所で騒がれる事は無い。

それにそこらへんはMZDがフォローしてくれているだろうと勝手に思い込んでいる。

「どうする?」

「入口はいくつかあるから、一人ずつ違うところから中に入るってのはどうかしら?」

「それがいいかもしれないわね」

「じゃあさっさと入口決めろー」

 暇なのか、影にもたれて浮いているMZDの姿がある。しかし、視線は空に浮かんだ月に向けられている。

 雲一つない晴天。太陽の代わりに月が地上を照らし出している。

 すんなりと三人は場所を決めた。サナエが正面玄関、Bが壊れた窓、カレンが裏口。

「いいかぁ?そろそろ始めっぞ?」

 プカプカとMZDが宙を浮いている。

「レディィィィィィィィィィィィ―――」

 テナーボイスが空気を震わせる。

「ゴォォォォッッッ!」

 パチンと指を鳴らした音が声と重なって不思議な空間を生み出す。

 耳に入ったのは土を蹴る音。そしてそれはすぐにアスファルトを蹴る音へと変わった。

「―――さて」

 浮いたままのMZDが不気味だが悲しげな笑みを浮かべる。

「この戦い、どうなるんだろうな」

 

 情報を元に動くBにとって、何一つ情報の無い場で戦うのは少し苦手だ。それでも自分の命と、『掃除屋』のプ

ライトを賭けて、これは勝たなくてはいけないと自分で決める。

 コルト25オートを握り締め、視界へ注意をやる。

(気配も音も感じない)

 廃墟になっているだけあって壁にはヒビが目立ち、砕けた壁が足元で岩となっている。隙間からは何処から種

が吹き込んできたのか、雑草が目立つ。

(相手は素人―――のハズよね)

 珍しく冷や汗が頬を伝った。

 

(さて)

 手にしている札を確認し、どれを使おうか考える。

 よく周りからはみんなに「いい子だね」と言われてばかりだ。しかし、その裏は言葉に出来ないほどどす黒い。そ

れは自分で認めるほどだ。二重人格に近いかもしれないが、両方一つの人格だ。

 黒魔術は趣味で始めたものだった。何か面白いものは無いかと思い、ちょっとした気持ちで始めたのだが、い

つの間にかこれをマスターしていた。

(まぁ、手始めに相手の手の内を読ませてもらおうかしら?)

 相手がどんな力を持っているかは知らない。しかし、MZDが集めたメンバーだけあって普通の人間でないのは

確かだ。

(あのベルちゃんやカレンさんがこうなるとは―――思ってもみなかったわ)

 選び出した一枚の札にそっとキスを落とす。札は姿を変え、闇と同化する鳥へと姿を変えた。

(二人の居場所を捜してきて)

 鳥は主人の命令を聞き入れ、羽ばたく音をたてずに飛び立った。

 

 手の上に乗っていたハムスターを床に下ろす。

「―――じゃあ、あの二人を捜してきてくれるかしら?―――」

 鼻をピクピクさせ、突然闇の中へと消える。二人の居場所を突き止め、無事に帰ってくる事ができればもう一度

会う事はできるだろう。

(まぁ、別に変わりは何匹でもいるんだけどね)

 袖から取り出した札には難しい漢字が書きなぐられている。

(それにしても、あの二人と戦う事になるとは、ね)

 さなえが裏の性格を持っているのは、わりと前から知っていた。何処か自分と同じようなオーラを発していたか

ら気付いていたのかもしれない。

(ベルちゃんの場合、なんだか別人―――なんだけど)

 誰もBがベルのもう一人の人格だなんて知らない。

(さぁ。二人には少し痛い目にあってもらいましょうか?)

 

(本当に殺すと―――やっぱり、ヤバイかしら?)

 銃弾の数を確認し、少し考え直す。

(もし殺っちゃった場合、上にばれると五月蝿そうだし。Gはまだいいとして、KKがなんと言うか―――ま、あたし

 にとっちゃどうてもいい事だけど?)

 壁に背を預け、気配を周囲へ向ける。まだ誰も見つからない。

(これで何かあったMZDに文句、言いましょ―――!)

 気配を感じたのは頭上から。見上げたそこには何も見えなかったが、微妙な影の動きに手が反射的に行動を

取った。

 滅茶苦茶な改造で取り付けた防音装置が音を飲み込む。

 微かな音だけが、沈黙の中に響いた。

 

(見つかったっ!?)

 予想していなかった出来事にサナエは驚きを隠せなかった。

 隠密工動用に作り出した使い魔は姿が周囲の色に隠れるという特殊能力をプラスさせてあった。普通の人に

なら見つかるはずが無い。

(なのに見つかった。それも、消されてる)

 そしてもう一つ、微かに聞こえた金属音。

(あれは―――銃?)

 出てきた答えはただ一つ。

『まぁ、いいわ―――やはりここは死ぬ気で殺り合うのが一番じゃないかしら?』

 手にすっぽりと収まるほどの銃を彼女が持っていた事は確認済みだ。

(実弾とか―――ありなの?)

 

 撃ち落した物を確認すると、そこにあったのは穴のあいた一枚の札だった。血で書かれているのか、鉄の匂いが

微かにだが鼻を刺激する。

(術符?本当にこんな事が出来る人間がいるというの?)

 銃という現実的な武器を持つBにとって、術などという非科学的なモノは信じがたいものだ。

(それもこれは―――黒魔術?フランスでも名前は聞いてたけど)

 どちらにしろ、これは二人のうちどちらかが操っていたモノだ。

 クシャリと音をたてて術符を握りつぶす。

 刹那。

 そう離れていない前方から何か物音が聞こえたのを聞き逃さなかった。

 

 奇声を上げられるとは思っていなかった。

(もしかしたら、今ので場所が知られたかしら?)

 何かを踏みつけた状態で物思いにふけてみる。

(さて、これは誰のかしら?)

 ゆっくりと足をのけると、そこには潰されたはずの小動物の姿は無く、一枚の札だけがあった。勢い良く踏んだ

せいもあってか、下の小石が貫通して穴だらけになっている。

(―――お札?)

 難しい漢字の書かれたサナエが使った札とはまた種類が違うモノだ。

(これって陰陽術じゃなかったかしら?何?カレンさんって陰陽師なの?)

 そう驚く事ではない。自分が黒魔術士だからだ。

(多分これは私と同じように場所を把握しようとしてたんでしょうね)

 本格的に戦いはもう始まってしまっている。

 

 使い魔の気配が消えたのはすぐに感じられた。

(あ〜あ。やっぱり見つかってしまいましたか)

 あくまでもカレンは冷静だ。最初から見つかるかもしれないと考えて送り出したのがよかったのかもしれない。

(それにしてもどっちに見つかったのかしら?)

 あいにく、彼女の場所からは金属音を聞き取る事は出来なかった。

(ま。仕方が無いわ)

 新たに取り出した札の数は軽く数十枚。息を長く細く吐き、札に命を吹きかける。

(さぁ、生まれなさい。私の使い魔達)

 宙に放り出された札が次々と姿を変えていく。それはハムスターであったり、鳥であったり、猫であったりと形は

さまざまだ。

(そろそろぶつかるわよ)

 

「えらく、まぁドンパチとやってんだな、あいつら」

 外から覗き込み、嘆息をつく。

「なぁ。どう思う?」

 その問いかけは答えない影に対して。

 月が雲に隠れる。

 照らし出すものが無くなり、下界を闇が覆う。

「さて、そろそろ終止符でも打ちに行くか」

 無言のまま、影は彼の横で頷くような動作をした。

 

 銃を手にした少女が歩く。

 術符を両手に少女が歩く。

 獣を従えて少女が歩く。

 全員は戦闘体勢に入っていた。

 自然と目的地は廃墟の中心部分へ。

 崩れた壁に姿を隠し、近づいていく。

 そして―――

『!?』

 ご対面。

 攻撃寸前の体勢から誰も動けない。下手に動けば相手を殺す前に自分から殺されるからだ。

 銃口は二人へ向けられ、術符は二人へ向けられ、獣は二人へ向けられ。

 一人でも動けば全員が―――死ぬ。

 小石が小さな音をたてた。

『!』

 誰かが動いた。

「はーい、これで試合終了〜♪」

 おちゃられた声が張り詰めた糸を切った。

 誰もが戦闘体勢を解除し、突然現れた少年に目を向ける。

「一体どういうつもりかしら?MZD」

「これからってところで」

「水を差すような事はして欲しくなかったんですけど?」

「俺は最初に言っておいただろ?『俺がここで見てる限り誰も死なさねぇ』―――って」

 三人の中心に立ち、パンと手を叩く。

「これで試合は終了。はい、ご苦労様」

「―――MZD?」

「なんだ?」

「そんな事今言われて」

「私達が大人しく「はいそうですか」って言うと思っているのかしら?」

「―――勿論」

 MZDが表情の読み取りにくい笑みを浮かべた。

 つぎの瞬間。

『!』

 重力のようなものを感じ、身体が地面に叩きつけられた。呻き声をあげる暇すらない。

 銃が手から離れ、術符が宙を舞い、獣が消える。

「お前ら、俺を誰だと思ってんだ?神だって事を忘れてんじゃねーよっ」

 最強と言われた彼女達は動けない。ただ固定された状態でMZDの声を聞いている。

「さてはて、今日は実に面白いものを見せてもらった。ありがとよ」

 遊ばれていた。

 それを知った三人の表情は怒りに満ちていた。勿論、MZDはそんな表情すら楽しんでいる。

「じゃ、そろそろ三人にゃ帰ってもらおうかな。影、頼むぞ」

 無言で影が頷く。

「おっと。この記憶はお前らの記憶から消させてもらうぞ。色々と面倒だし、お前らもその方がいいだろ?」

 スタートと同じパチンという指を鳴らす音。

 三人の意識は、そこで途切れた。

 

 朝がやってくる。

 

「あ。おはよう、ベルちゃん」

「Sanaeちゃん?おはよう」

 珍しく通学途中で二人は会った。なにげない会話を交わしているが、二人して何かが頭にひっかかって話が時

々途切れてしまう。

「おはよう。ベルちゃん、サナエちゃん」

「カレンさん!」

「おはようございます」

 通学途中に通り過ぎるカレンがいる神社。挨拶だけを交わして通り過ぎていく。

 三人は覚えていない。昨日繰り広げた自分達の争いを。MZDに遊ばれていた事を。

 太陽が全ての過去を消し去るようにサンサンと照りつけている。

 

はい、書きあがりました。

12000HIT(獲得者、ひさぎ)リクの―――

『C黒ベル、毒カレ、裏さな。女王は私よ、決定戦。
 暗黒の彼方で、今、眼醒める。日は陰り、木々は怯え、子供は泣き、家は軋む。
 大気は冷え、花は枯れ、鳥達の囀りは失われ、狂人の嗤いが世界を覆う。
 終焉の最中、微笑むのは、誰――!!?
 「恐い〜。い〜」』

―――な小説。

毎度ながら、題名関係無し。

いやぁ、もうこれで精一杯(汗)。

とゆーか、まぢで決定戦させたら多分―――黒サナと毒カレ殺したりそうやからさぁ(汗)。

あぁ、俺の愛はベルちゃんに全て注ぎ込んでるさぁ〜♪

02.8.21

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