ガタンゴトン。

 ガタンゴトン。

 電車の音は毎日同じで。

 そこに居合わせる人の顔も大体同じ。

 いつも変わらない服装の駅員が合図をすれば、電車はけたたましいベ

ルを鳴らして出発を皆に告げる。

(―――はぁ)

 彼女はおもいっきりため息をついた。あまりにも堂々すぎるため息に、

近くにいた人が何かと思って視線を投げかけてくる。

 好きでため息をついているわけではない。ため息をつくからには、それ

相応の理由がある。

(私だってねぇ、昔はモテたのよ?)

 誰に話すわけでもなく、胸中昔話を語り始める。

(就職したての時は会社のアイドルだー、なんかみんな言ってくれて。先

 輩達もよくしてくれたわ。食事に誘われるのは当たり前で、朝帰りも

 あったわ。そうしたら、次の日は彼の車で出勤。そう、そんな毎日だっ

 た。だから遅刻なんか今の今まで縁のないものだったのよ)

 そこまで一息で言うと、再びため息をついた。隣に立っているスーツの

男が新聞を見ている目を動かして彼女を見つめる。

(ったく。じろじろ見てるんじゃないわよ。私は見世物じゃないのよっ?も

 うっ、ほんとうに嫌なんだから。だから電車通勤なんて嫌いなのよっ。

 まぁ、今はこれしか通勤方法がないから仕方が無いけど?―――えぇ

 そうよ。モテたのは10年前の話よ。今ではただのおばさんOLよっ。今

 日もあのだらだらした会社に出勤。定時まで一生懸命お茶汲みをする

 自分の姿を想像すると―――泣けてくるわ)

 というより、切なくなってくる。

 電車はまだこない。なのに駅のホームは人で溢れかえり、今日は鳩が

歩く隙間もない。

 空を見上げれば白い羽が振ってくる。それは地上の全てを白に染めあ

げた。あの無機質なビルですら綺麗な綿帽子を被らされて、無邪気な子

どものような顔を浮かべている。そしてお揃いの帽子を貰った電車は、

真っ白になった線路を走れるのはまだかと、やはり雪を始めてみた子ど

ものように駅員をはやし立てている。

『●●行き電車は10分遅れで出発します。大変ご迷惑をおかけしており ますが―――』

 駅員の申し訳ない声がやっと決まった出発時間を告げる。その言葉に

人々は安心したり、困ったりして各自携帯を手にしている。

(はぁ、私はどうしようかしら?)

 空を見上げる。

 雪はまだまだ降ってくる。

 雪やこんこ、霰やこんこ、降っても降ってもまだ降り止まぬ。

 歌の通り、まだ降り止まない。

 携帯を鞄から取り出す。指先が冷たい。ちゃんとクリームを塗ったりし

て手入れしているというのに、この寒さでは全て無駄になっている。

 慣れた手つきで携帯をいじる。メールの早撃ちなどはもう得意技。その

気になれば懐かしのポケベルの早撃ちでも可能だ。

(―――って。最近の子達は知らないわよね。ポケベルなんか)

 自分も年を取ったなと思いながら電話を繋げる。数秒呼び出し音が鳴

ると、その後に毎日聞いているむさい親父の声がした。

「あ。課長ですか?すみません、今日は休ませて頂きます」

 たまには若い気持ちに戻って、懐かしい街に繰り出してみるのもよい

かもしれない。

 雪に包まれて子供心を思い出した冷たい無機質達と共に。

ガタンゴトン。

電車は揺れます。

雪で止まります。

お陰で歩きました。

二駅歩きました。

あぁ、そんな思い出が懐かしい高1の冬(笑)。

あはは、これは通学電車やね。

て事で通勤電車。

ちなみに俺は通勤車。

電車ってのは不便やよなぁ。

ま、それ以上に不便なんは船やけど(笑)。

あはは、流石志摩。

 

ちなみにこのキャラは誰だかお分かりいただけたでしょうか?

答え。

モモコさんですな。

うん、あの人。

個人的にあの人はこんなキャラであって欲しい。

 

04.2.3