〈 フォーンチークの遺伝的盲目 〉

フォーンチークを繁殖するにあたって心にとめておかなければならないことは「盲目のヒナ」を引き起こす傾向のある遺伝子的な欠点である。

これはフォーンチークという変異が抱える避けて通れない問題である。

盲目のヒナ発生率を減少させる方法はフォーンチーク/グレイチークのページに書いた通り。
しかし完全に防ぐ方法はない。滅多に出ないが運が悪かったら対策をこうじても出る。

身体的障害は「目」に限定される。とくに身体が虚弱ということはない。
健常な個体でも目が開くまでは同じ条件なので皆一緒になって親に餌をねだる。
健常な個体の目が開いてからは盲目の仔との反応が違ってくるので、その頃に親鳥が健常な仔に優先して餌を与えるため盲目の仔の育ちが悪いとか、盲目の仔を育雛放棄することがあるかもしれない。
また無事に巣立ちを迎えても、そのあと餌をもらえなかったり夜間巣に帰れず凍死したりする危険もある。
目が見えないので隙間にはさまったり水に落ちたり事故にあう危険性も高い。
それらの危険をクリアして大きくなっても、自分で餌を探してついばめるようになるかどうか。
いつまでたっても自分で食べることができないなら餓死してしまうだろう。

そんなこんなで盲目のFCが成鳥になるまで生き延びる確率は非常に低い。
たいていは小さいヒナのうちに、もしかすると孵化後数日の間に死ぬことも多いのかもしれない。
親鳥に任せてそういうことになり死んだヒナを発見しても、それはそれで仕方ないと思うしかない。

仕方ないと思うことができるならいいとして、そんな可哀想なヒナは絶対に見たくないと思うならFCの繁殖はよく考えてほしい。
滅多にないし運が良ければ出ないのだが、出るかもしれないことは必ず心にとめていてほしい。

つぎに、盲目のヒナが生まれてしまったとして、このままでは死んでしまうかもしれないから助けてやりたいと思う人もいるであろう。
障害を持った仔はどうせ助けても虚弱で生きられないから無駄だとよく言われたのだが、先に書いたようにFCの障害は目だけに限定されるようで身体はまともなようである。
挿し餌をして、健常な仔より長くかかるだろうが自分で餌をついばめるようになるまで育て上げられれば、危険性を取り除いた飼育ケースで飼うことができる。
その際には餌や水の位置を決めて動かさないことである。
私はそうやって盲目のFCを2年以上飼っているので私の今までの経験を、鳥友から提供いただいた情報も交えて書いておきたいと思う。




(写真左から順に説明します)
(1)正常なFCのヒナ。デメキンのように眼球のふくらみが目立つ。眼球の黒い色が透けて見える。
(2)青い矢印のヒナだが孵化してすぐに盲目であることがわかる。眼球の出っ張りがないので頭部が細く頭が小さく見える。眼球のあるべき部分に血液が透けたようになっている。眼球が形成されてないのである。
(3)大きくなるにしたがって眼球は作られようとするため何となく黒っぽいものが出来てくるが、とても正常な眼球にはなれない。健常な仔は目が開きかけているが盲目の仔は開かない。





(写真左から)
(4)ここまで大きくなっても目が開いていない盲目FCの2羽。眼球が無いというような状態。
(5)巣立ちまで親に育てられたGCのヒナたち。眼球は未発達のため目がへこんだ外観である。
健常な兄弟鳥のように積極的に親鳥に餌をねだれないためか給餌が不足ぎみになるようである。
よく観察して足りないようなら挿し餌で補ってやらねばならない。
(6)眼球の形成不全の程度は個体差があるが、ひどいものは眼球がないだけでなく瞼の切り込みが小さく瞼を開けられない個体もいる。また、このFCヒナのように涙の出口がなく水泡のように膨れてくるものもいる。
(7)片目だけ水疱が出来ているFCペンギンの幼鳥。もう片方は正常なので軽症の部類。
もし全く見えなくても大きくなれば何かに止まりたがるので低い位置に止まり木をつければ止まるし、容器の縁によく止まっている。




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(写真左から)
(8)撒いた餌を自分で食べられるまでになった(5)。こうなればひと安心。あとは事故がないよう飼育環境を整えて飼えば大丈夫だと思う。
しかしここまで来るのには健常鳥よりもかなり日数を要する。親や兄弟から分けて専用の飼育容器に入れ、足元に餌を撒いて自分で食べるよう仕向けながらソノウを観察し十分に食べてないなら挿し餌をする。けっこう根気とテクがいるし、まず愛情がないととても出来ない。
(9)「謎の白いFC」メスである。眼球がないので奥目な外観。2006年2月生まれなので3歳を超えた。
両親が「ジャンボキンカ」だったのでこの鳥も身体が大きい。羽毛も密で羽艶も良い。元気で好奇心旺盛で、青菜もちぎって食べるしたまに大きな良い卵を産んでもいて普通以上にいい鳥なのだが普通でないのは眼球がないことだけ。
(10)「謎の白いFC」オスである。なぜフランクが消えるのだろう。このオスももうじき3歳だが彼は自分で餌を食べられるようにならなかった。水も飲めない。よって3年間ずっと挿し餌である。挿し餌内容について
長期にそれのみで生かしていくには餌の成分比率をよく吟味しないといけない。ヒナのような勢いで成長しているわけでないのでタンパク質やカルシウムが過剰ではいけない。しかしこの鳥も盲目である以外は他に身体に問題はなく元気である。
そしてこれは(6)の鳥が大人になったものである。ヒナのとき涙の出口がなく大きな水泡ができていたが、針で突けずにいたところ、ある日急に穴が開いて水があふれた。綿棒に目薬を含ませ傷口を拭いてやるうち穴があいたまま治ったのか水疱はできなくなった。
(11)載せるのをためらった怖い写真であるが、これは水疱が自然にハジケずそのまま大人になった鳥である。
獣医にもかかり何度か針で突き水を抜いてやったがすぐまた溜まる。危険な賭けだが全身麻酔でレーザーメスを使ったこともある。水を溜まらなくするには穴を作らなくてはならないが傷口はすぐに塞がりまた水が溜まる。
猫くらい大きければ何かやりようもあるのだが、小さい生き物なので対処は難しい。何度も危険なことを出来ないので諦めてこのままなのだが他に病気もせず3歳半になった。
この鳥の水疱は頭骨と頭皮の間にある。だから幸いなのかもしれない。もし眼窩の中に水疱があれば脳を圧迫するかもしれずマヒを起こすなど危険があると獣医に言われた。
この鳥は父イザベル母FCの仔である。右目は眼球が小さい気がするが一応正常なようである。水疱のある左はおそらく見えていないと思う。片方でも視力があるので他の健常鳥と一緒に生活している。
しかし全盲の鳥を飼育するなら縦網の鳥カゴでは翼をはさんでしまう事故があるのでクロスした金網のカゴか、水槽に網でフタをする、というものが良いと思う。

人の手で一旦助けたら助けたで後々その鳥の問題を一生引き受ける覚悟が必要と思う。



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